バイナリー・ハート
そして隣にいるロイドを無視して、思い切りランシュに抱きつく。
「え……ちょっと、ユイ……」
うろたえながらランシュは、顔色を窺うようにロイドを見上げた。
ロイドは少し眉を寄せて、顔を背ける。
そしてボソリとつぶやいた。
「……今だけは、許す」
ランシュに抱きついたまま、ユイは涙声でつぶやいた。
「よかった。ランシュがいなくならなくて」
「心配かけてごめんね。先生のおかげだよ」
「うん」
ユイはランシュから離れて涙を拭うと、ロイドに小さい笑顔を向けた。
「ロイド、ありがとう」
ロイドは腕を組んでそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに答える。
「別に。ランシュが選んだ道だ」