バイナリー・ハート


 ロイドはユイをギュッと抱きしめる。
 ユイも同じように抱きしめ返した。

 耳元でユイが嬉しそうに囁く。


「あなた、来年にはお父さんになるのよ」
「あぁ。なんか不思議な感じだな。家族が増えるって」


 ユイが勘違いした時に夢見た、家族との情景が脳裏に蘇り、嬉しさがこみ上げてくる。
 ただ以前と違うのは、そこに子供たちと一緒に笑う、ランシュの姿がある事だ。

 自然に頬が緩み、ロイドはユイの耳元で囁き返した。


「そういう事なら仕方ない。そのかわり毎日、思う存分キスしてやるからな」


 ユイはくすぐったそうに首をすくめ、クスクスと笑う。


「二年前もお預けになった時、同じ事言ったわね」
「余計な事を思い出すな」

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