バイナリー・ハート
「大丈夫?」
「うん。ありがとう」


 結衣が礼を述べると、ランシュは耳元でため息を吐き出すように、安堵の声を漏らした。


「よかった」


(あれ……?)


 ふと違和感を覚えた。
 だが、なんだか分からない。

 ランシュに抱き起こされ、残りの数段を下りる。
 ランシュは安心したようににっこり笑った。


「ユイにケガさせたら、先生に恨まれるからね」


 違和感がなんなのかは、やはり分からない。

 結衣は曖昧に笑みを返して、店先で待っている配達員のところへ向かった。

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