バイナリー・ハート
「脳って、人工知能の事?」

「そこまで精巧じゃなくても、プログラムを記憶したり制御したりするプロセッサを内蔵していないロボットだよ」

「え? それで、どうやって動くの?」


 待ってましたとばかりに、ランシュはニッコリ笑って、得意げに説明を始める。
 こんなところは我が子自慢をする時のロイドにそっくりだ。
 師弟は似てしまうものらしい。


「人間で言うと、脊髄反射みたいなものだよ」
「熱いポットをうっかり触って、アチッってやつ?」

「そう。あれって脳の指令を介さず身体が動いてるよね。つまりセンサと伝達回路だけで動かす事は可能なんだ。プログラムを介さないから判断も動きも速いしね。けど、プログラムを介さないから、必ずしもこちらの都合よく動いてはくれないんだけど。そこがまた、おもしろいんだよね。昔は色々作ったなぁ」


 昔といっても、ほんの数年前だろう。
 彼の人生はこれからの方が長いのだから。
< 69 / 263 >

この作品をシェア

pagetop