バイナリー・ハート
そして、意味ありげな笑みを浮かべ、ロイドを見据える。
「でも、方向性は見えてきたかな?」
しばらく無言のまま、二人で睨み合っていると、階下からユイの呼ぶ声がした。
「ロイドーッ。そろそろ下りてこないと遅刻するわよーっ」
ロイドは壁についた手を離す。
ランシュはフッと笑って目を逸らすと、横をすり抜け階下へ姿を消した。
ロイドの弱点がユイである事を、ランシュには知られているだろう。
今はまだ、ユイに危害を加えてはいないが、その内ユイが安心しきった頃に、何らかの行動を起こす可能性は充分考えられる。
そうなる前に、なんとかユイを守る手立てを講じなければならない。
本当は一秒たりともユイの側を離れたくはないが、そんなわけにもいかない。
ロイドは重い足取りで、一階への階段を下りた。
(第1話 完)