バイナリー・ハート
直接手助けする事も、話を聞く事も出来ない。
他に自分がロイドに与える事が出来るものは、もう自分自身しかない。
そう思った途端、知らず知らずに口走っていた。
一瞬驚いたけれど、それでもロイドは嬉しそうに笑って応えてくれた。
今朝、目覚めた時、目にした穏やかな表情が、いつものロイドに戻ったような気がして、少し嬉しかった。
そう思ったのも束の間、再び拒絶された。
頑固なロイドは、たとえ誰にもばれなくても、決してルールを破る事はない。
だからこそ、国王をはじめとする人々の信頼を得ているのだろう。
分かっていても、自分だけは例外になりたい。
それがロイドの得ている信頼を揺るがす、わがままだとしても。
フゥとため息をついて、小鳥を肩に留まらせる。横からランシュが、声をかけた。
「どうしたの、ユイ? 元気ないね。先生とケンカでもしたの?」
心配そうに見つめるランシュに、結衣は笑顔を作って答える。