バイナリー・ハート


「でも……」

「心配しないで。私もそれくらいの稼ぎはあるのよ。ね、ランシュは初給料で何を買いたい?」


 有無を言わせぬ結衣の口調にランシュは諦めたのか、苦笑してためらいがちに答えた。


「オレもプレゼントしたいな」


 結衣の知っている限り、ランシュには身内と呼べる人はいない。
 ロイドとは、それほど仲良さそうには見えない。
 師弟以上の関係ではなさそうだ。

 だとしたら、一体誰にプレゼントしたいのか。
 ランシュの照れくさそうな表情が、結衣の興味をかき立てた。

 思わずテーブルにひじをついて、身を乗り出す。


「誰に?」
「え……」

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