大地主と大魔女の娘
時折り、こちらを気使ってか見てくる。
「レオナルが悪い」
「レオナルの言葉が足りなかった」
「レオナルの言葉が余計だった」
「叔父様がイジワルだった」
「叔父様が説明不足だった」
「叔父様が勝手だった」
―――等など、俺に唇という鉾先(ほこさき)が向う度にカルヴィナがそっとこちらを窺う。
それに加えて、この状況をどうしたものか答えをくれ、と懇願されているようにも見えた。
残念ながら、それは彼女らの気が済むまで解放ならないと答えるしかない。
実際声に出して尋ねられたワケではないから、答えようがないが。
恐らくどんな怒りの説教よりも堪える事だろう。
少なくとも俺はそう感じている。
目が合うたび黙ったまま頷いて見せると、カルヴィナも微かに頷くように見える。
その様子を眺めながら、カルヴィナの部屋を二階に移そうと考えていた。
杖も取上げたままにしておこうかとも考える。
「毎度の事ながら、女のハナシってのは長いねぇ」
「おまえも長居しすぎだろう、スレン」
ぼやくスレンには確かに同感だが、そこは黙っていた。