大地主と大魔女の娘


 どうあっても俺に頼るという気が起こらないらしい。

 むしろ頑なに、自分で自分の面倒を見ると言って譲らない。

 そんなカルヴィナの態度に落胆する自分が居る。

 それを認めるまいと思う心から放たれる言葉は、自分でも驚くほど冷たく響く。


「布なんぞ、どこにあると言う?」

「え、えと」

 カルヴィナは困ったように黙り、少しのあいだ考え込んだ。

 やがて、ためらいがちにおずおずと、自身を守るショールをずり下ろして行く。

「ここに――。」


 羽織っていたショールを片手で丸めると、俺の方に差し出した。

 とたんに露わになる着衣は予想以上に薄着であった。

 首筋と肩を覆うべき布地が無い。

 肩紐は細く、首の後ろで結んである。

 胸元はそれを絞る格好の造りであり、娘らしい身体の線を強調していた。


 無くても無いなりにそれなりに有る様に見えるではないか。


 何て事をしでかしてくれるのか、この娘は―――。


 これで誘う気が無いというのなら、俺は間違いなくこの少女は魔女だと認めざるを得ない。


 カルヴィナの露わになった肩を月が照らしている。


 小動物を思わせるような黒目がちの瞳からは、またもや夜露が一しずく伝っていた。


 月光がほの淡く影を落とす。


 口元のほくろと、首筋を辿った先のほくろへと視線をなぞるように移していた。


 

「あの、地主様? どうかなさいましたか?」


 魔女の娘が恐るおそる、覗き込むように見上げてくる。

 そこで訳のわからない思考から、我に返ることが出来た。

 勢い良くそのショールを引っ手繰ると、彼女の身体を包むようにして巻きつけた。


 まだ秋の気配が浅いとは言え、夜分は冷え込む季節だ。


 そのまま抱き寄せ、勢いのまま膝の裏に手を回し抱え上げる。


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