大地主と大魔女の娘


「戻るぞ」

「地主様、重いですから! 自分で、自分で戻れます」

「騒ぐな。館の者に迷惑だ」

「静かにします。ですから、下ろして……。」


 カルヴィナは俺の胸元に手を押しやる。

 当然許さずその肩を引き寄せ、抵抗すらも封じ込めた。


 その時だった。


 アオオオォォォ―――――ンン!!


 夜の静寂の中、そう遠くはない所で遠吠えが上がった。


 狼だ。

 ワン! ワォン! ワン! ワン! ワン!


 その遠吠えに刺激を受けたらしい、飼い犬たちがいっせいに吠え立てる。

 カルヴィナはその鳴き声に怯え、身を竦ませた。

「こんなに人里近くに狼が来るのは珍しいな。いい加減さっさと戻るぞ、カルヴィナ。こんな人気の無い所に居てもたもたしていたら、狼に襲われるかもしれない」

「はい」


 脅しが効いたのか、カルヴィナは素直に頷いた。

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