大地主と大魔女の娘

 この娘を見ているとイライラする。

 触れられると、彼の想いが心の内が伝わってくる。

 ごめんなさい。

 そっと心の中でも詫びた。

 地主様は当然ながらお怒りだった。

 怖い。

 ただひたすらに恐ろしかった。

 怖い。怖い。怖いよう。おばあちゃん――!

 身動きが取れない。がんじがらめだ。

 何をしても彼の気に触る結果になる。

 何をしなくとも彼の気に触る事となる。

 ビクビク震えるしかない自分がとても惨めだった。


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 地主様はもう何も仰らない。


 無言でゆっくりと―――感じるが、どんどん足早に進んで行く。

 ゆっくりに感じるのは、地主様が気を使って下さっているおかげだと思う。

 私の身体を不必要に揺らす事が無いから、つくづく男の人というものは何て力があるのかと感心してしまう。


 緊張はするけれども、ここはとても安定感がある。


 長い回廊を、月明かりが煌々と照らしてくれている。

 そこを地主様に抱えられて進む。

 コツコツと地主様の靴音だけが響く。

 何とも言いようの無い不思議な気持ちだった。

 不快ではないけれども、愉快でもない。

 だからといってその中間でもない。

 とても落ち着けるはずが無い状況にも関わらず、私はすっかり地主様に身を預けきっている。


 少しだけ、眠気まで感じてきた。

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