大地主と大魔女の娘


 そんな事を言い出すのは、私の魔女としての知恵が必要だから。

 きっとそうだ。

 彼は村長の跡取りだもの。

 村を豊かにするために、森の恩恵が必要だと思ったに違いない。


 地主様みたいに。


 そうでなければ顔なじみとは言え、ろくに知りもしない娘に求婚するなんて有りえなさ過ぎる。

 それでなくとも色々と欠陥だらけで、持参金も用意できないというのに。

 とんだ辱めだと思った。

 地主様だって仰っていたではないか。



 持 参 金 が な け れ ば


 嫁 の 貰 い 手 だ っ て な か ろ う 。



 そうなのだ。

 その家につり合う持参金を用意できなければ、正式な婚姻と認められないものなのだ。

 ましてや彼は村一番の有力者の家。

 そんな事も分からない訳ではあるまいに。

「今までのオレの態度はそこまで酷かったんだな」

「……。」

「悪かった。オマエにしてみたら、急に何を言いだすのかといった所だな? 驚かせたな。すまない」


 そんな彼の様子に、真摯な気持ちを踏みにじってしまった罪悪感すら覚える。


 でも、どうしても悔しくて涙が滲んでしまった。

 そうだ。悔しい。

 それでもどうにか涙が零れないようにと、がんばって顔を上げ続けた。


 何より自分の知らない所で、おばあちゃんと話をしていた所が気に入らない。

 それにおばあちゃんは、どうして私に何も教えてくれなかったのだろう?

 言うまでも無いと判断したのだろうか。

 お互いの仲で秘密なんて無いと思っていたから、少なからず衝撃だった。


 いきなり現れて我が物顔で、訳のわからないことを言い出すのは地主様だけで間に合っている。


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