大地主と大魔女の娘
朝一番の来訪者を迎え入れる。
「おはようございます、叔父様!」
「おはようございます、地主様」
にっこりと笑いながらリディアンナが言い、きっちりと頭を下げながらカルヴィナが言った。
先程、扉を勢い良く叩いたのはリディアンナの方だろう。
そんなところは姉に似なくてもよいと思う。
いきなり開け放たれないだけ、まだマシだが。
「……おはよう」
今ちょうど着替え終わり、食堂に顔を出そうかと思っていた所だった。
「叔父様、朝食をお持ちしましたの!」
リディがはきはきと答える。
まあ、見れば分かる。頷いて見せた。
カルヴィナが緊張した面持ちで、慎重にワゴンを押し進めてきた。
二人は既に身なりを整えていた。
リディアンナは髪を二つに分けてみつあみにし、年相応の少女の雰囲気を演出しているようだ。
装飾のあまり無い生成りのスカートに前掛け、赤地のベストという服装は、明らかに町娘の軽装である。
カルヴィナはといえば薄灰色の踝まである丈のスカートに、同じく物入れの付いた前掛け姿だった。
自分で縫ったと言っていた出で立ちである。
そこにリディアンナの差し入れた、少し厚手の上着を着込んでいた。
色合いは、濃い緑である。それとお揃いの布地で髪をまとめている。
それが魔女の娘によく似合っていた。
やはり女同士の見立ては違うな、と密かに感じる。
そんな祭りの準備に行くための仕度を整えた二人に、給仕されながら朝食を取っている。
「おまえ達はどうした?」
そう尋ねたら、とっくに済ませたという返事だった。
俺にもさっさと済ませて、森に送り届けろという催促らしい。
木の実を入れて焼きこんだパンに、薄く切り分けたチーズ。
干したイチジクに、茹でた卵。
焼いた肉が少し。
それらが綺麗に盛り付けられた皿を、リディアンナがテーブルへと並べ、カルヴィナが茶を注いで置いた。
「ありがとう」
礼を言うとリディアンナは「どういたしまして!」と、晴れ晴れとした笑顔を見せた。
一方のカルヴィナは薄っすらと微笑んでから、恥ずかしそうに俯いた。