大地主と大魔女の娘
広場の中央に、屋根つきのやぐらが出来ていた。
でもまだ完成ではないらしい。
やぐらの下に作られた、簡易の休憩所に皆で座っていた。
ここはそのまま手を加えて、当日には用具置き場になる。
今は吹きさらしだが、もう少ししたら布を張って風除けも作るそうだ。
そのために張られたロープと重石に気をつけるようにと、注意されながら手を引かれた。
見知った女の子も何人かいた。
顔だけなら見かけた事のある、青年も何人か。
困ったように視線を逸らす子もいれば、親しげな笑みを浮べてくれる人も居た。
気後れしてしまう。
やっぱり、来なければ良かったと思っていたら、椅子を勧められた。
すぐに帰るからと言っても、いいから! と強く勧められた。
お茶も振舞われる。
ミルアは気安く彼らに挨拶し「約束通り魔女の娘を連れてきたわよ」と、改めて紹介してくれた。
「祭りの準備に通ってくれているんだって? ありがとう、助かっている」
「今年は地主様もご一緒してくれる、っていう話じゃないか。エイメのおかげだな」
うん、うん、助かる。ありがとうと、口々に言ってもらえて恐縮だった。
それから不意打ちに謝られた。
「昔、からかってごめん。ジェスが悪い」
「何だと! オレだけのせいにするな!」
「ジェスがなあ」
「ガキでなー?」
「うるせえ!!」
「あ~も~! 謝るのなら、ちゃんと謝る!」
ミルアが仕切ると、また和やかな雰囲気に戻ってほっとした。
「ごめん」
「悪かった」
「許してくれ」
「ジェスを」
「うるせえ!」
「えっと、もう気にしないで下さい。あっ、えっと、ところで、やぐらはもうすぐ出来そうなの?」
居たたまれなくなって、無理やり話題を変えてみた。
そうでもしなければ、いつまでも謝られてしまいそうだったから。
もう、済んだ事なのだ。
「ああ、もうじき完成だ」
「多分、あと四・五日かな」
「ギリギリじゃねぇか!」
「だな」