大地主と大魔女の娘
困っているとジェスが現れた。
「おまえら、何やっているんだ?」
「あじみー」
「ミルア、もう駄目だよ」
籠を抱えて現れたジェスの呆れた声に、ミルアが高々と片手をあげて答えた。
「……俺にもくれ」
「はい」
「えー! ジェスにばっかりずるい~」
「ミルアはもう4杯も飲んだでしょ! おしまい!」
瓶をミルアから庇いながら、どうにか注いでジェスに渡す。
「ん。美味いな。……ミルア、もう準備は出来たのか?」
「うっ。まだ、かかりそう」
「いいのか。祭りまであと三日を切ったぞ」
なおもたらたらと文句を言い続けるミルアに、ジェスは巧みに話を振った。
ミルアは自分の最優先事項を思い出したらしく、私の腕を掴んで立ち上がって言った。
「こんな事している場合じゃなかったわ! 手伝ってエイメ」
酔っ払いというのは自分勝手で、単純なものだ。
ひとつ、勉強になった。
引き摺られるように奥の、おばあちゃんの部屋に戻った。
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・
そこで記憶は途切れている。
ただ陽射しがぽかぽかと暖かく、寝床もちょうど良いくらいにぬくもっていたのは確かだ。
そこにふわふわの温かな塊りとも言っていい、子供たちが抱きついてきたのだ。
ふふふ、と思わず頬が弛んだ。
この三人兄妹は、一番上のお兄ちゃんが六歳で、二人の妹は五歳の双子だ。
みんな、お揃いのふわふわの巻き毛で、ぱっちりとした瞳は深緑。
その上、お母さんお手製のお揃いの頭巾を被っていた。
「魔女っこ、おまじないして!」
せがむお兄ちゃんのカールの前髪をかき上げて、唇を押し当てながら古語で唱える。
『森の精霊よ。幼子に森の加護をお与えください』
次はリュレイ。
二人からは同じように、お返しを貰った。
最後に、ミルアの腕から抜け出してきたキャレイ。
キャレイは嬉しそうに笑い声を上げると、真っ直ぐに私を覗き込みながら言った。
「魔女っこ、おおじぬしさまにも、おまじないしてあげて!」