大地主と大魔女の娘

 困っているとジェスが現れた。


「おまえら、何やっているんだ?」

「あじみー」

「ミルア、もう駄目だよ」


 籠を抱えて現れたジェスの呆れた声に、ミルアが高々と片手をあげて答えた。

「……俺にもくれ」

「はい」


「えー! ジェスにばっかりずるい~」

「ミルアはもう4杯も飲んだでしょ! おしまい!」


 瓶をミルアから庇いながら、どうにか注いでジェスに渡す。


「ん。美味いな。……ミルア、もう準備は出来たのか?」

「うっ。まだ、かかりそう」

「いいのか。祭りまであと三日を切ったぞ」


 なおもたらたらと文句を言い続けるミルアに、ジェスは巧みに話を振った。


 ミルアは自分の最優先事項を思い出したらしく、私の腕を掴んで立ち上がって言った。


「こんな事している場合じゃなかったわ! 手伝ってエイメ」


 酔っ払いというのは自分勝手で、単純なものだ。

 ひとつ、勉強になった。


 引き摺られるように奥の、おばあちゃんの部屋に戻った。

 
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 そこで記憶は途切れている。

 ただ陽射しがぽかぽかと暖かく、寝床もちょうど良いくらいにぬくもっていたのは確かだ。


 そこにふわふわの温かな塊りとも言っていい、子供たちが抱きついてきたのだ。

 ふふふ、と思わず頬が弛んだ。

 この三人兄妹は、一番上のお兄ちゃんが六歳で、二人の妹は五歳の双子だ。

 みんな、お揃いのふわふわの巻き毛で、ぱっちりとした瞳は深緑。

 その上、お母さんお手製のお揃いの頭巾を被っていた。

「魔女っこ、おまじないして!」


 せがむお兄ちゃんのカールの前髪をかき上げて、唇を押し当てながら古語で唱える。


『森の精霊よ。幼子に森の加護をお与えください』


 次はリュレイ。

 二人からは同じように、お返しを貰った。

 最後に、ミルアの腕から抜け出してきたキャレイ。

 キャレイは嬉しそうに笑い声を上げると、真っ直ぐに私を覗き込みながら言った。


「魔女っこ、おおじぬしさまにも、おまじないしてあげて!」


 
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