大地主と大魔女の娘

 結局そのままでしばらく、おばあちゃんの部屋で作業を続けようかとなった。

「申しわけありませんが、これは女の子たちの秘密の作業なのです。少し、私たちだけにしていただけませんか? ねっ! エイメ」

「う、うん」

 腕輪を後ろ手で隠すようにしながら、ミルアが言った。

 勢いに押されて、あまり何も考えずに頷いてしまう。


 おしゃまなリュレイとキャレイも、私たちの味方をする。


「おんなの子だけーねっ」

「だけー」

「「お兄ちゃんも、だめよ!」」


「魔女っこ、それボクにくれるよね?」

「あっ、こら! 抜け駆けなしだぞ! カール」

「子供相手になんだ」

 地主様が呆れたような声を上げる。


「はいはい。行こうぜ、地主様、カール。あの腕輪の行方は祭りの日のお楽しみだ。まだ、クルミは山とあるしな」


「何故、俺が」

「オレはまだやぐら作業があるから、クルミの方は任せた」


 そう言いながら、ジェスは大きく手のひらを開いて見せた。


「つまみ食いは五個分まで許す」

「またそれか……。」

 地主様になんて事を!

「て、手伝います」

「駄目よ、エイメ。そうしたら間に合わないわ」

「だって……。」

「じゃあ、交代交代でお手伝いしよう。地主様、それでいいでしょう?」

「――ああ」


 地主様の返事が一瞬遅れた。

 何故か戸口の鍵をいじりながら、気にしておられるようだった。

 鍵と言っても錠では無く、取り付けた楔を横に引いて仕掛けるものだ。

 壊れてはいないはずだけれど?


「おまえ達、秘密だというのならば、鍵をかけておけば良かっただろう。全く無用心だな」


「え? だって急にお客さまが来たりしますから」

「ねぇ?」


 ちびちゃん達を抱き止めながら、ミルアと顔を見合わせる。

 この時期、引っ切り無しに村の人がやって来る。

 もしかしたら今日もまた、シュリ達女の子が顔を出すかもしれない。

 気付かずに、それを締め出すような事はしたくなかった。

「オレを睨んでもどうにもなりませんぜ、地主様」


 ジェスは何故か肩をすくめて見せてから、やぐら作業に戻って行った。



< 195 / 499 >

この作品をシェア

pagetop