大地主と大魔女の娘
結局そのままでしばらく、おばあちゃんの部屋で作業を続けようかとなった。
「申しわけありませんが、これは女の子たちの秘密の作業なのです。少し、私たちだけにしていただけませんか? ねっ! エイメ」
「う、うん」
腕輪を後ろ手で隠すようにしながら、ミルアが言った。
勢いに押されて、あまり何も考えずに頷いてしまう。
おしゃまなリュレイとキャレイも、私たちの味方をする。
「おんなの子だけーねっ」
「だけー」
「「お兄ちゃんも、だめよ!」」
「魔女っこ、それボクにくれるよね?」
「あっ、こら! 抜け駆けなしだぞ! カール」
「子供相手になんだ」
地主様が呆れたような声を上げる。
「はいはい。行こうぜ、地主様、カール。あの腕輪の行方は祭りの日のお楽しみだ。まだ、クルミは山とあるしな」
「何故、俺が」
「オレはまだやぐら作業があるから、クルミの方は任せた」
そう言いながら、ジェスは大きく手のひらを開いて見せた。
「つまみ食いは五個分まで許す」
「またそれか……。」
地主様になんて事を!
「て、手伝います」
「駄目よ、エイメ。そうしたら間に合わないわ」
「だって……。」
「じゃあ、交代交代でお手伝いしよう。地主様、それでいいでしょう?」
「――ああ」
地主様の返事が一瞬遅れた。
何故か戸口の鍵をいじりながら、気にしておられるようだった。
鍵と言っても錠では無く、取り付けた楔を横に引いて仕掛けるものだ。
壊れてはいないはずだけれど?
「おまえ達、秘密だというのならば、鍵をかけておけば良かっただろう。全く無用心だな」
「え? だって急にお客さまが来たりしますから」
「ねぇ?」
ちびちゃん達を抱き止めながら、ミルアと顔を見合わせる。
この時期、引っ切り無しに村の人がやって来る。
もしかしたら今日もまた、シュリ達女の子が顔を出すかもしれない。
気付かずに、それを締め出すような事はしたくなかった。
「オレを睨んでもどうにもなりませんぜ、地主様」
ジェスは何故か肩をすくめて見せてから、やぐら作業に戻って行った。