大地主と大魔女の娘
おばあちゃんの部屋で腕輪を作る。
「ミルア、ここまで頑張って。出来たら呼んで?」
「わかった。こう、同じように繰り返せばいいのね?」
「そうそう」
手元から目を離さないミルアを、ちびちゃん達は瞳を輝かせて見つめている。
こうやって女の子は腕輪の作り方や、思いの込め方を学んで行くのだろうなと思った。
私も小さい頃、おばあちゃんの魔法のような指先を夢中になって見つめた事を思い出す。
杖を引き寄せて立ち上がり、部屋を出た。
地主様に張り合うように、カールは躍起になってクルミをかきだしている様だった。
「お疲れ様です、地主様。すみません。私もお手伝い致します」
「ああ」
「魔女っこ、ボクのとなりね!」
カールに手を引かれ、すぐ側の椅子に腰を下ろす。
「見て! ボク、こんなに取り出したよ」
「うん、すごいね。いつもおうちでもお手伝いしているから、上手だね」
「うん。はい! これ、あげる」
そう言って、カールはかき出したクルミをひとつ摘まんで差し出す。
「ジェスが五個分までは良いって行ってたから、ボクの分いっこあげるね。はい、あ~んして!」
「ありがとう」
どうやら食べさせてくれるらしい。
促がされるまま口を開けると、小さな指先が唇に触れた。
「おいしい?」
頷いて見せながら、私もひとつかき出して摘まむ。
「はい、カールにも。あ~ん?」
「あーん!」
にこにこしているカールが可愛くて、私も笑う。
「おいしいね、魔女っこ」
「うん、おいしいね。じゃあ、頑張って終わらせよう」
ふと、地主様の方を見ると既に、かなりの量のカラが積まれていた。
もくもくと作業を続けている。その手つきはとても早い。
その様子にカールは慌てたようで、また必死に作業を開始した。
私もそれを見習う。
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「エイメ! 出来たよっ、ここから先はどうしたらいいの?」
おばあちゃんの部屋から顔を出したミルアに呼ばれる。
私は既に、クルミ五十個分はかき出した所だった。
振り返る。
ミルアは待たずに、こちらにやって来た。
「うう。ちょっと気分転換に手伝います」
言いながらミルアも作業に加わる。
「ミルア、大丈夫? ちょっと休んだら?」
「ミルアがやるとクルミがぼろぼろになるね」
「うるさいな~! お腹に入れば同じでしょうったら」
カールの容赦の無い一言に、ミルアが言い返す。
「いっしょ、いっしょ!」とちびちゃん達は、テ-ブルの周りをはしゃぎ回った。
ミルアは「クルミが色石に見える」とぼやきながら作業を続けて、結局そうやって日暮れを迎えた。