大地主と大魔女の娘
地主と娘と幻の存在
眠りにつく前に、カルヴィナには内側からきちんと鍵を掛けて休めと言い渡してあった。
大魔女の部屋の方には、鍵が付いていたのを確認済みだった。
だからこそ、石屋の娘の提案を呑んだところもある。
いたいけな少女に無体を働く趣味は無い。
それほど女に飢えている覚えも無い。
だが、男という身と性(さが)を信用しきっている訳でも無い。
用心はするに越した事は無いのだ。
「獣はこの家に侵入したりしませんよ? それほど心配なようでしたら、地主様こそ、こちらの鍵付きの部屋でお休み下さい」
等と的外れな事を言い出すカルヴィナを、半ば強引に押し込めて鍵を掛けさせてから横になった。
カルヴィナが使っていたであろう寝床だ。
娘のまとう香草と花の香りに包まれている気がする。
それはそれで、どうかという状況だろう。
「きちんと日に当てて手入れをして置きましたから、どうぞご容赦下さい」
知らず渋面になっていたであろう俺に、そう申しわけ無さそうに詫びるカルヴィナに、何と言葉を掛ければ良かったのか。
「気に病む必要は無い」としか言えないまま、俺の世話を焼こうとするカルヴィナに鍵を掛けさせたのだ。
それが最適の方法だったろう。
いつまでも寝床の周りをうろちょろされるよりは、ずっと。
どうでもいいが、寝付ける気がしないのは何故だ。
腹立たしいまでに無防備な、魔女の娘のせいに違いあるまい――。