大地主と大魔女の娘
「魔女っこ。この間、地主さまにおまじない、してあげなかったから……かもよ?」
リュレイが遠慮がちに、上ずった声で切り出した。
「おまじない?」
「そうよ。ジェスもいたじゃない、あの時。皆でクルミをかき出した時よ。お兄ちゃんも私たちも、魔女っこから、魔よけのおまじないしてもらっていたでしょ!」
「それが何だって言うんだ?」
「もう! 森の神様のイタズラかもしれないでしょ! だから、魔女っこ、おまじないしてあげたら、地主さまのお面はずれるかもよ?」
だん! と足を踏み鳴らして、リュレイがジェスに噛み付いた。
「それを言うなら、俺だってしてもらってないぞ」
「「ジェスは悪ものだもの」」
幼い声が仲良く被った。
どうやら二人とも、地主様の味方らしい。
「おまえ達。気を使わせたな」
言いながら、地主様はリュレイとキャレイを抱き上げた。
片腕ずつに軽々と。
二人はきゃあきゃあと喜んでいる。
「魔女の娘のまじないならば、ちゃんと昨夜もらっているから、安心しろ」
さらりと言ってのけた地主様に、頬が火照った。
ミルアがばっと勢い良く私を見た。
無言だったが何か言いたそうに、こちらを見ている。
村長さんもジェスも、眼差しだけで問い詰めてくるのは止めて欲しい。
余計に恥ずかしく、居たたまれなくなってしまう。
そうなの――?
じゃあ、何でかな――?
「村長の言う通り、森の神の意思とやらかもしれんな」
「うん! いいんじゃないの~レオナル?」
「何がだ、スレン」
「地主業は廃業しちゃってさ、今日からは森のカミサマとして君臨するがいいさ。君、ちょっと働きすぎだしね」
スレン様はしきりに頷きながら、そのような事を言い出した。
冗談とも取れる内容だが、スレン様はあながちそうでもなさそうだった。
地主様は呆れたような声を出した。
「馬鹿を言うな。今日だけだ。そのカミサマ業とやらは」