大地主と大魔女の娘
魔女と感情
魔女の娘に施す食事など無い。
そのスープはそう訴えていた。
怖かった。一口くちにしたとたん、思わずむせた。
申し訳ないから堪えて飲み込んだら、胸もお腹も痛みだした。
苦しい。
歓迎されていないのをこうやって身をもって知るのは辛いと思う。
身動き出来なかった。
二口目を口に運ぶ勇気は無かった。
「お願いですから一口でも多く召し上がって下さい」
そう泣きそうな表情で訴えられて、驚きに目を見張った。
(どうして? 私があまり食べないでいるだけで、泣きそうな顔をするの?)
ここのお屋敷に勤めている女の人たちは、出会ったばかりの私にとても優しくしてくれる。
いつも着替えや食事の事をあれこれと世話を焼いてくれるのだ。
申し訳なく思っていた。
きっと仕事を増やしているに違いないから、なるべく大人しくしていようと決めている。
もちろん、彼女たちの意向に沿いたい。
すっかり湯気の上がらなくなったスープを見下ろした。
これを全部飲み干したら、彼女たちは安心してくれるだろうか。
でも飲み干した後の体調に自信は無かった。