大地主と大魔女の娘
大魔女の娘は人よりも少し離れた所で、静かに佇む娘である。
無関心なのではない。
誰かや何かに助けを求められた時には、そっとその知識と知恵を差し出す。
その様子はまるで、憩う小鳥のためにそっと枝葉を伸ばす若い樹のようだ。
ただ静かに風にそよぎながら、遠慮がちに周りのもの全てを見守っている。
寄り添うものを拒まない、その大らかさはあたたかい。
言葉で表現する者は戸惑いを覚え、苛立つ。
それは言葉では説明が付かないがため。
良くも悪くも浮世離れした雰囲気を醸し出し、おいそれと近付く事すら憚られる。
当の本人はそれを、自身の生まれ持った色のせいだと思い込んでいる。
それが魔女の娘に憂いを持たせる。
その憂いが余計に、娘の持つ雰囲気を妖艶に魅せるのだ。
けして自分からは主張しない。
見過ごす者は見過ごせばよい。
それに気が付く者など少数でいい。
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いつもと違う雰囲気に苛立つ。
カルヴィナがあまりにも可憐だからだ。
巫女役の純白の衣装を身に着けた娘に、穢れなど見当たらない。
大魔女が森の奥深くで愛(いつく)しんできた訳がわかる。
ひとたび人の輪に引っ張り出されたら最後、人の目を集めてしまう。
好奇、賞賛、羨望、嫉妬といったものから、男の要らぬ感心までと幅広く。
無意識に存在を主張して止まない娘は、様々な思惑を人々に抱かせてしまう。
無自覚なのだから余計にタチが悪い。
早速まとわり付いていた男達。
カルヴィナにしきりに酒を勧めていた。
無理に飲み干そうとして、咳き込むカルヴィナから取上げれば、それは恐ろしく濃い酒だった。