大地主と大魔女の娘
祭りの儀式
始まりの大太鼓が鳴り響くと、それまでさざめいていた人々の話し声が止んだ。
森への感謝を捧げる、お祭りが始まる。
息を詰めてその瞬間を皆で迎える。
そんな気持ちが一つになって、広場は静寂に包まれながらも、熱気に満ちていた。
涼やかな風が吹き抜けて、その火照りをいくらか冷ましてくれる。
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やぐらの前に、村のみんなで輪を作って見守る。
半分は男の人たち。
太陽の昇る方角に集まって固まる。
地主様はその真ん中辺り、一歩だけ前に出て立っている。
そのまた半分は女の人たち。
太陽の沈む方角に集まっている。
私もその真ん中辺りに、地主様と同じように一歩だけ前に立っている。
広場を挟んで、地主様とは真向かう格好だ。
その男の人と女の人の間に挟まれているのは、子供たちだ。
子供たちも同じように、男の子と女の子に別れて固まっている。
影はほとんど足元に落ちている。
それは太陽が昇りきった事を意味する。
広場の中央に歩み出た村長さんが、大きく声を張り上げた。
『これより、大いなる森の定めに感謝を捧げるための祭りを始める!』
いつもの、ほんわかした雰囲気の村長さんではないみたいだった。
威厳に満ちて響いた宣誓の言葉も古語だ。
でも、言い終わってからにっこり子供たちに笑いかける頃には、いつもの村長さんに戻っていた。
子供たちがいっせいに、広場の真ん中を目指して駆け出す。
男の子も、女の子も。
すごく小さな子も、手を引かれながら。
子供たちは全員で二十名くらいだ。
その中に、先程の女の子の姿が見えないか探す。
だが見当たらなかった。
もしかしたら、恥ずかしがって木陰にいるのかもしれない。
あまり深く追及するのは止めにして、目の前の事に集中する。