大地主と大魔女の娘
地主様、いや……。
森の神様となったシュディマライ・ヤ・エルマに、立ち上がるように手を貸す。
奪うことのみにしか心の向かなかった獣は心を得た。
一人の娘を思いやる心を知って。
森の恩恵に預かる自身を知って。
ただ風のように森の中を、駆け抜けていただけの獣はもう何処にもいない。
『あなた様は真の森の神様です』
娘の言葉に、獣は自分の力のあり方を知るのだ。
疾風まとう暗闇は、森の神様。
万物のありかを知らしめて、導く風となる。
『おまえがそう言うのならば、それに恥じない行いをすると誓おう。我が名はシュディマライ・ヤ・エルマ。娘よ、おまえの名は何という?』
『お好きなようにお呼びください、シュディマライ・ヤ・エルマ。あなた様のお付けくださった名を、我が真名といたしましょう』
『それは真か?』
『はい』
『それが意味すること、おまえは承知しているのか?』
『はい。わたくしはあなた様をお慕いしております』
『ならば共に森に生きよ』
『はい』
『では、おまえをこれからは、森の真白き光、と呼ぼう』
『恐れ多いことでございます』
『我を真の森の神としてくれる、そなたこそ真の光だ。恥じることは何もない』
『ありがとうございます。喜んでお受けいたします』
『では、共にこの森の行く末を見守るとしよう』
そうして娘は、差し出された手を取る。
迷いなく。
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そこで拍手が沸き起こった。
今まで息を詰めて見守っていてくれた、皆の歓声も一緒に上がる。
やりとげたのだと知る。