大地主と大魔女の娘

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 雲の上から雨を降らせるのって、きっとこんな気持ちなのかもしれない。

 木々や草花たちが喜んで恵みの雨を受ける。

 その様子に微笑み、満足を覚えながら雨を。


 それはとても素敵だ。


 小さい子たちから順番に前に並び、行き渡ったら、大人たちが前に出る。

 スレン様とリディアンナ様にも、えいっとお菓子を降らせた。

 お二人共も、良い笑顔を見せてくれた。

 それから。

 何故か隣同士で恵みを受けるミルアとエルさんにも、お菓子とお花を降らせた。


 そういえばミルアが誰に腕輪をあげるのか、聞いていなかった。

 そういうことなのかもしれない、と思った。

 後でミルアに聞くことにする。


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 何故だか呼ばれたような気がして、そちらに視線を落とすとジェスと目があった。


 ジェスは両手をこちらに伸ばし、大きく広げている。

 何だか泣き出しそうな笑顔に見える。

 そちらにもお菓子を、と思ったら籠を取り上げられた。

 代わりに花が入った籠を押し付けられていた。

 ――地主様に。

 なんだろうと思って訝しんで見上げた。

 仮面の横顔は何を考えているのか、いつも以上に解らなかった。


 ともかく、ジェスにはお花を振らせてみた。

 くるくると風に吹かれて、お花は頭上をかすめて行ってしまうようだ。

 うふふ、と思う。

 何度見てもいい。

 お花が風に舞う様を見守る。


 地主様は無言でただ、立っている。


 どうしたのだろうかと見上げた。


 それからおもむろに、籠の中のお菓子をわっしと一掴みした。


 何と!

 地主様ときたらそれを、ものすごい勢いで振りかぶって、ジェスにお菓子を投げつけたのだ!


 ええ!?


 驚く。

 だがジェスもジェスだった。

 しっかりと受け止めて、地主様を睨んでいる。


 周りの人たちも遠巻きにして、何やらニヤニヤしているように見える。


 何だろう、二人とも。


 男の人同士、なにやら仲がいいような気がした。


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