大地主と大魔女の娘

 首を横に振った。


 私は右脚を引き摺らねば歩けない。


 踊れる訳がない。

 言われなくても知っている。

 でも、地主様はわざわざ言う。

 身の程を知れというみたいに。


 おまえみたいな者が泣くと腹が立つ。


 足を引きずって歩く障害者の。


 みっともない、みすぼらしい娘。


 最初に宣告されていたではないか。

 忘れたわけではないが、失念していた。

 あんまりお祭りが楽しくて……。

 本当は忘れていてはならなかったのだ。

 身の程をわきまえないでいるから、こうやって地主様の不興を買う羽目になるのだ。


 私は本当に学習しないと反省しても、遅かったようだ。


 ただ体を丸めるようにして、胸を押さえた。

 ぎゅうぎゅうに締め付けられて苦しかったから。

 痛い。

 どうしよう。


 息を吸い込むだけでも、痛い。

 涙があふれる。


『あの男に応えてやるというのはこういう事だ。解っているのか?』


『答える?』


『応える』


 地主様の手が傷跡をなぞり上げて行く。



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