大地主と大魔女の娘
目蓋をあけ、光を受け入れる。
とたんに闇は去ったように思った。
肌に違和感を覚える。
それは違和感というよりも、解放感だった。
カルヴィナも密着していた分、気づいたのだろう。
とうに緩んだ仮面の紐が引かれるのを感じた。
カルヴィナだった。
二人の胸元に挟まれるようにして、仮面が滑り落ちていた。
『……。』
『……。』
互いに無言で、しかし笑顔で見つめ合う。
仮面を見て、また顔を見合わせる。
『カルヴィナ。俺は戻れたようだ』
『はい。地主様』
『違う』
俺を地主と呼んだ唇を、口で封じた。
『……ぅ、ん、や……じぬ……。』
『違う』
俺をちゃんと名で呼ばないのなら、また獣に戻ってやる。
それを思い知らせるために、甘い仕置きを続けた。
頑ななカルヴィナの抵抗が止むまで、ずっとそうしていた。
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『そういえば俺は何ひとつ、おまえに申し込んでいなかったな』
『え? 申し込む、ですか?』
すっかり呼吸を乱してしまったカルヴィナが、たどたどしく尋ね返してきた。
これ以上ここに居ては、取り返しのつかない事をしでかしそうになる己を諌めた。
今はまだここまでと言い聞かせる。
『そうだ。俺と一緒に祭りに参加して欲しいとも、踊って欲しいとも言っていなかった。カルヴィナ、俺と踊ってくれるか?』
『踊れません、地……レオナル様。誰とも……。この足では』
『大丈夫だ。嫌ではないのだな?』
おそるおそるといった様子で、カルヴィナは頷く。
『だったら何の問題もない』
カルヴィナがまたあれこれ考え始める前に早くと、その身体を抱き上げた。