大地主と大魔女の娘

大きく組まれた木の枠組みの中、炎が勢い良く燃え盛っている。

 何組みかの男女が、既に向かい合ってステップを踏んでいる。

 それにぶつからないように、上手に避けながら地主様は回った。


 炎の周りを、くるくる回りながら、一緒に笑った。

 さっき一緒に撒いた花びらも一緒に舞う。


 私を落とさないようにしっかりと抱きかかえてくれる腕の中、安心していられた。

 ただそうやって、くるくるされているだけなのに息が上がってきた。


「レオナル様、ちょっと、回りすぎやしませんか」

「確かに」


 声を上げて笑う地主様なんて初めてだった。

 目が回ったのだろう。

 クラクラしてきた。


「もう! ふざけすぎです」

「舌を噛むぞ」

「きゃあ!」


 抗議してみたが、笑い飛ばされてしまった。

 つられて一緒に笑ってしまった。

 笑い過ぎたのか、だんだん苦しくなってきた。


 楽しいけど、苦しい。

 今の私の気持ちは、体の声と一緒だと思った。


「……。」


 何だ。


 私は地主様が好きなのだと気がついた。


 好き。


 その瞬間――ぽたりと落ちた雫は、夜露なんかじゃない。


 地主様が好きだと認めるしかない。


 けして相手にされるわけないからと、見ないふりをしてきた気持ちを、潔く見据えることなんて出来やしなかった。


 でも。


 それでも。


 ――好き。


 そうしたら、楽しいけど苦しいと思った。

 息ができないと。胸が詰まるのだと。


 軽快な音楽が少し緩やかになった。

 それに合わせるように、レオナル様もまた優雅に歩調を落とす。


 私を抱きかかえて、あやすように身体をゆすり続けてくれる。


 どうされたって、胸は苦しいばかりだ。


「よく、がんばったな」


 そう言って大きな手が、後ろ頭を撫でつけてくれた。

 何を労ってくれているのだろう。

 それでも一気に肩の力が抜ける。


 レオナル様の首筋にすがって、肩に額を押し付ける。


 そのまま、何故だか溢れ出した涙を止めることが出来なかった。


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