大地主と大魔女の娘
地主様に抱えられて、そっと下ろしてもらえる瞬間が好き。
――好き。
あふれる気持ちのままに、少しだけ勇気を出してみる。
ありがとうございます、という気持ちも。
それらを地主様に抱きつく腕に託す。
ぎゅっと力を込めると、大きな手が背中を撫でてくれる。
まるで壊れやすいものに触れるみたいに感じるから。
大切にしてもらったという錯覚に浸る事も出来る。
最初の内は恥ずかしいという気持ちが強くて、素直に地主様を頼る事が出来なかった。
「疲れたな? もう横になって休め」
何度かあやすように頭から背を撫でられてから、身体を横たえてくれる。
大きな手。
私の頭だって一掴みに出来てしまうほどに。
ミルアと一緒に怒られた時を思い起こして、少し笑ってしまった。
地主様はなんだかんだといって、私を子供扱いするのだと思う。
何だか暖かなものにくるまれているような、そんなふわふわした気持ちになってしまう。
こんな気持ちのまま、眠りに落ちていけたらさぞや良い夢が見られるだろう。
そう思いながらも、まどろみに身を任せる訳には行かない事に気がつく。
「地主様?」
「レオナルだ、カルヴィナ」
「あの、巫女の衣装がシワになってしまいますから、横になる前に着替えます」
「そうか。それもそうだな」
「はい」
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シュス、とわずかに空気を切る音が、耳元を掠める。
肩紐が解かれたのだと知る。
もう片方も。
腰に巻き付けられた飾り布も緩んで、楽になった。
背中に回された指先が、身体を締める衣装の紐を難なく探り当ててしまった。
僅かに持ち上げられて体が浮く。
あまりに流れ良く進む手際の良さに、しばらく惚けていた。
「じ、じぬしさま……? なに、を?」
そこまで子供だと思われているのだろうか?
「地主様?」
柔らかく押し止められながら、疑問を口にした。
「レオナルだ」
そう間近で囁かれると、反論ごと塞がれた。
地主様の、唇で。
そう呼ぶ心の中でさえ見透かされたように、強く押し当てられてはひとたまりもなかった。
「や……!」
思わず漏らした悲鳴すら、飲み込まれてしまう。
熱くて柔らかい感触に侵食されて行くかのよう。
さっきもやぐらでされたのと、同じようにされる。
絡め取られて、執拗に嬲られる。
こわい。
どうして名前で呼ばないと怒られるのだろう?
聞きたいことがたくさんある。
自分自身にも。
す……き?
ほんとうに?
自分に問いかけてみる。
涙がこぼれ落ちた。
――苦しい。