大地主と大魔女の娘

  結局はカルヴィナが思うようにならないから、怒りを爆発させてしまっただけだ。


 結果がこれである。


 心底怯えさせ、何もかも拒まれた。

 ここから帰らない、と強く宣言された。

 当然の流れだろう。


 確か菓子屋の所でも似たような事があった。

 ならば、俺もここに居座るまでだ。

 あの時のように、地主という地位を見せつける真似はするまいと思った。


 結局カルヴィナには自分が借金を返さぬまま逃げようとしたから、連れ戻されるのだと認識させてしまったからだ。


 閉じられた扉の前で、ただひたすら待つ――。


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 日も傾いてきた頃に意外な来訪があった。

 スレンだ。

 奴にしては珍しく血相を変えていた。


「もうレオナルになんて、任せておけない」


 そう、ごくごく小さく囁くと、扉に向かって叫び出した。


 あれこれ訴える内容はまるっきり作り話でもなかったが、だいぶ大げさだった。


「フールールー! レオナルは大事なお役目を放棄しようとしているよー!」


 それがさもカルヴィナのせいで、という風に思わせるのに充分な小芝居だった。

 なるほど。

 こうやって人の心理を巧みについて、こいつは世の中を渡ってきたのか。

 俺には出来ない芸当だ。

 妙に感心してしまったが、同じようになろうとは思えなかった。


 罪悪感を嫌と言うほど感じたらしいカルヴィナが、扉を開けてくれた。


 俺に勤めを放棄させては自分のせいだ、と思っての事らしかった。

 真面目なカルヴィナらしいと思ったし、まだ本格的に見限られた訳ではなさそうだとも思えた。


 おずおずと顔をのぞかせたカルヴィナは、ひどく憔悴していた。

 その事に胸が締め付けられた。

 同時にえも言われぬ色気を感じて、動けなかった。


「カルヴィナ!」


「フルルゥ!! 捕まえたっ」


 そんな俺とは裏腹に、スレンの動きは素早かった。

 あっという間にカルヴィナを捕まえてしまった。

 それが面白くなく、取り戻そうとしたが拒否された。

 スレンからもカルヴィナからも。


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