大地主と大魔女の娘
寝台に頭だけを乗せる格好で少女は目蓋を閉じていた。
華奢な肩紐も腕と同じく、くったりと滑り落ちている。
この娘が元より華奢すぎるせいか、規制の物では少々大きすぎるようだ。
館に子供用は見当たらないし、間に合わせではこのようになるのだろう事は初日から気がついていた。
やはり、至急仕立て屋を呼ぼうと決意する。
それよりもまずはこの現状をどうするかが問題だった。
「……。」
声を掛けようとして躊躇(ためら)う。
まず、間違いなく娘が怯え慌てふためく様が浮かんだからだ。
細心の注意を払って、娘を抱え上げる。
とたんに手のひらに伝わるまろやかさと温かさが、愛玩動物を思わせた。
くったりと身を預ける身体は、小さいながらもしっかりとした熱を持っている。
あたたかい。
それは生まれたばかりであった愛犬を抱き上げた時の感覚に似ていた。
浮遊感に僅かに顔をしかめた娘に内心焦りながらも、どうにかシーツにくるんでやる事に成功する。
意味はあまり成さない肩紐も指先で掛け直し、やっと落ち着いて少女をまともに見ることが出来た。
ご機嫌伺い。
こんなにも無防備に眠っておきながら、ひとたび目を覚ませばコレは心底怯えた眼差しをこちらに向けるのだ。