大地主と大魔女の娘
『エイメリィ』とでも呼んでやれば良いのだろうか。
そうしたらこの娘は笑顔を見せるのか?
リヒャエルに『エイメリィ』様と呼ばれて、くすぐったそうに笑い声を上げていた。
「……。」
何故かそこで不愉快だと思った。
無性に苛立つとでも言えばいいのか。
不可解だった。
見下ろす娘はよく眠っている。
ふと気が付けば、娘の口元のほくろをなぞっていた。
そのまま首筋をたどる。
鎖骨の下、胸元にもほくろがあった。
それがかえって白い肌を際立たせているようにも見えた。
―――娘はよく眠っている。
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コ・ココン! という軽やかなノックと同時に扉が開け放たれていた。
「レっ……!」
姉が何か言葉を発しようとして、すぐに慌てたように引っ込めた。
おそらく発されるはずだった、罵りの言葉の代わりにクッションを顔に当てられたが。