大地主と大魔女の娘
それよりも、そんな事をいちいち口にするルゼに対して疑問を覚えた。
「俺には神秘の能力とやらは確かに備わっていない。だがしかし、そういった能力に恵まれたあまりに偏った見方もしない。そう言った点において、あの集団に必要な指揮が出来る能力はあったのだろう。そこを磨いたまでだ」
「相変わらず抜け目のないこと。そうね。あそこは比較的高い能力者の集まりではあるけれども、組織としてはもろい部分も否めない。そこに事務処理能力にも優れた貴方が高く買われたって訳ね」
ルゼの洞察力は相変わらずだった。
物の見方が俺と近い。
だからこそ、彼女との会話は子気味良いと感じてもいたのだ。
そこに親しみを覚えたのかもしれない。
だが、今こうして話してみると、それは同志としてだったと思えた。
「そうだな。俺にしてみたら何故、今までその点に誰も気がつかなったのか疑問でならない。まあ、古い組織ほど訳の分からない縛りが多いものだろうから仕方がないのかもしれないが。幸いなことに巫女王様が柔軟であってくれたからだ。運が良かった」
「それでも神殿内の風当たりは強かったでしょうに」
「せいぜいジジイどもの嫌味くらいで、実害はそうでもない」
「そんな風に流せるとは思えないけど。邪魔者は排除する。それがあそこのやり方でしょ」
「だから俺は運が良かったのだと言っている。巫女王様のお力添えがなければ、今の俺は在りはしない」
「そうなのでしょうね。お噂にしか聞いたことは無いけれど、あの御方の聡明さはよく耳にするわ」
「古いものを全て否定しても始まらない。だが、新しいものを入れる必要があるとあの方は知っておられた。そこにちょうど良く、俺のような染まっていない余所者が現れただけだと仰っておられる」
「まあ。思っていた以上に先を見据えている方なのね。だったらお父様の手のひら返しも、解らないでもない」
「手のひら返し?」
「もともと王属よりも、神殿側に付いていたのがジャスリート家だったもの。うちもかつては能力者が多く出る血筋だったようだし。今は上手く均衡が保たれているようだけれど、どちらに付いたら公爵家の命運は開けるか。お父様が目を付けたのはそこよ」
相変わらずのタヌキぶりだ。
口には出さなかったが、表情には出ていたのだろう。
同意したようにルゼが頷く。