大地主と大魔女の娘
私の視線に気がついたのだろう。
ジルナ様がそれを私の膝に乗せてくれた。
「あんまり、こういう事は得意じゃないのだけれど、何とかね」
そう言いながら、ご自身のお腹にそっと、両手を当てる。
空色のお召し物はゆったりとしていて、お腹の膨らみ具合が目立たないようになっているようだ。
「えっと、その、お祝いの言葉がまだでしたね。申し訳ありません。ジルナ様、おめでとうございます」
「ううん、いいのよ。気を使わせたわね。ありがとう、カルヴィナ」
新しい命を宿したジルナ様は、つわりで苦しまれたせいか、ずい分ほっそりとして見える。
そんな風に儚げでいても、自信に溢れて見えた。
命を受け止める器とは、こういう事を言うのかと、静かに感動する。
命、命、命。
春、勢い良く枝葉を伸ばす木々によくそれを感じたが、こうやって間近で感じるものもある。
畏怖すら感じる。
先程見た、女神像が浮かんだ。
目の前に女神がいる。
彼女もまた、女神様の化身に違いない。
ゆったりと微笑むジルナ様に見蕩れてしまう。
それから赤ちゃんはいつ生まれるのかといった事や、次は男の子か女の子か、リディアンナ様には分かっていても、教えないでと言ってあるのだ、といった話で盛り上がった。
年の離れた姉と兄に囲まれて、赤ちゃんはどんな子に育つのだろう、とジルナ様が次々と楽しそうに話すのを聞いていた。
「きっとレオナルも、いい遊び相手になってくれると思うわ」
「叔父様なら間違いないわね」
リディアンナ様が、深く頷いて請け負った。
また何の前触れも無く、地主様の話しが出たので、ドキリとしてしまう。
「そうそう! カルヴィナ、村のお祭りで巫女役をやったのですって? しかもレオナルが神様役!」
「はい」
「見たかったわ、とても」
嫌な流れになってきた。