大地主と大魔女の娘


姪に通された部屋に、カルヴィナの姿は見えなかった。

「……。」


 だがすぐに、不自然なふくらみのあるカーテンが目に入る。

 必死で気配を押し殺しているのだろう。


 カルヴィナの名を呼ぼうとしたが、踏み止まった。

 騙されたフリをして背を向け、扉に向かって歩く。

 どこか張り詰めていた膨らみが、緊張を解いたせいかゆるやかになった。

 そっと後ろをうかがうと、あからさまにホッとした様子が伝わってくる。


 少しからかってやろう。

 そう思ったせいもある。

 だが、コレは面白くないという思いもよぎった。


 このまま、俺に会えずともいいのか。

 会いたいと焦がれているのは、俺だけなのか。


 呼吸を整えてから、踵を返した。

 わざとらしく靴音を響かせながら、大股で近づく。


「大きなミノムシがいるな」


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 まず、カーテンごと抱きしめて逃げられないようにしてから、ミノムシを暴きにかかった。


 しっかりとカーテンをつかんでいるのだろう。

 ミノムシは姿を見せまいと抵抗してくる。

 それが俺を煽るだけだとも知らずに。


 だが力では、圧倒的にこちらが勝っている。


 やがて、姿を現したカルヴィナに息を呑んだ。


 身長差から見下ろす俺の目線に飛び込んできたのは、白さの際立つ胸元だった。

 髪は高く結い上げられており、項から胸元に掛けてを大きく見せつけてくる

 今すぐにでもこちらを向かせ、その胸元に死ぬほど口付けてしまおうか。

 仕置きだ、と言い聞かせて、戸惑いながらも応えるより他はなくなる、カルヴィナの泣き声を楽しもうか。


 そんな囁きに耳を貸してしまわないためにも、後ろから抱きしめたままでいた。


「何か言ってくれないか?」


 あまりにも長く沈黙が続くせいで、不安になってきて尋ねた。

 もしやまさか、俺とは二度と口をきかない事にしたのか、と。


 らしくもなく、緊張している自分がおかしかった。


たった二日ばかり会わないでいた間に、カルヴィナに何が有ったのだろう。

 彼女のまとう雰囲気がまるで違うように感じた。

 顔を赤らめて耳までうっすら染めた様子も、恥ずかしがって身を隠す仕草も、俺を煽る意図に溢れかえっている。

「カルヴィナ。まだ、いじけているのか?」

 そう尋ねたとたん、勢い良く首を横に振られた。

 これはまだまだ、いじけているのだと一目でわかった。

 機嫌を損ねたカルヴィナが愛しくて仕方がない。

 頑なにカーテンに身を隠そうとするカルヴィナを押しとどめながら、おかしな雰囲気になってしまう。

 無理やり窓際に追い詰めて、その身に付けた物を剥ぎ取る。

 例えそれがカーテンであろうとも、身にまとわりつかせているのなら、衣服と変わりがない。


 
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