大地主と大魔女の娘


隅に追い詰めて、抱きしめて、暴いて行く。


 妙な背徳感と興奮が入り交じる。


 愛しさと共に加速して行くのは欲しいという想い。


 どうしても背の方にある寝台を意識してしまう。

 ここが自室でなくて本当に良かったと思う反面、そうではない事が残念でならない。

 後ろから抱きすくめたカルヴィナの後頭部に唇を押し当て、香りを吸い込んだ。

 逃れようとした身体を引き寄せる。


「カルヴィナ。あまり俺を困らせるな。男を焦らしすぎると、痛い目に合うぞ」


 唸るように、そう告げる。

 怖がらせないようにと振舞うのは、限度があるらしい。


 心地よい日だまりの香りを再び吸い込み、首筋に口付けた。


「きゃ……あっ」


 わななく唇から思わずのように漏れた悲鳴が、艶めかしい。

 きつく吸い付いて痕を残してやりたい所だったが、ここは姉の屋敷だ。リディアンナもいる。

 場所が場所なだけに自制するが、柔らかく食みながら食いつきたくてたまらない。

 このままマントにくるんで連れ出して、街まで馬を走らせて、宿にでも篭ってやろうか。

 頭の中では、そんな段取りをしだしてしまう。


 柔らかな膨らみを後ろから、手のひらに収めて弄んだ。

 薄い布地越しの感触だけでは我慢がならず、胸元のリボンを緩めて指先を侵入させる。


「あっ!」

 鋭い悲鳴が上がった。

 だが、容赦はしない。

 というよりも手のひらに吸い付くような肌の感触と、えも言われぬ柔らかさの虜になった。


「カルヴィナ……。何て、やわらかいんだ。それに感度もいいようだな」


 わざと卑猥な言葉を囁いて、彼女が身悶える様を楽しむ。


 興奮したせいか、声が掠れてしまう。


「や、やっ、やぁ! こわいよ、地主さま、やぁ!」


 いやいやと頭をうち振りながら、必死で俺の手を押し止めようとする指先を取った。

 そのまま、もたれかかってきた体を受け止めて、寝台へと腰掛けさせた。


 小さく乱れた呼吸を整えながら、カルヴィナに向き合う。

 瞳の焦点はどこか定まっておらず潤み、唇は吐息がこぼれた形のままだ。

 自分の身に何が起こったのか解らない、というよりも理解できていないらしい表情があどけなくもあり、色っぽくもあった。


 左手でその頬を包むようにしながら、反対の手で項から首筋をゆっくりと撫でる。


 澄んだ夜空が瞬いてから俺を見た。


「やっと、俺を見てくれたな」


 そのとたん、涙がひとしずく、カルヴィナの頬を伝った。


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