大地主と大魔女の娘

 違います! そんな事はありません! 

 そう叫んでやりたかった。だがそれは許されなかった。

 スレン様のマントにくるまれる。


 カチャリと音が響いた。

 扉が開け放たれたらしい。

 口を塞がれているから、言葉を発することが出来なかった。

 それに視界も遮られている。


 スレン様はどう言い訳する気だろうか――?

 だが、聞こえてきた声はあまりにも平坦だった。


「誰もおりません。風でしょう」


 何ひとつ、動揺の感情も伝わってこない。

 いくらなんでも、地主様でも無理な芸当だろうと思われた。

 私だけならまだしも、部外者のスレン様がこんな夜更けに屋敷に忍びこんでいるのだから。


 まったく気がつかれなかった?


 そんな馬鹿な。


 どうか地主様の演技であって欲しいと思うと同時に、ホッとする自分も居た――。


 
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