大地主と大魔女の娘


 自分がひどく、いけない事をしているのは理解している。

 そっと忍び寄る。

 明け方が近いとはいえ、室内は薄暗かった。



 そっと目当ての寝台に歩み寄る。

 一歩ごとに妙な高揚感が生まれては消えた。


 地主様が眠っていた。

 額に腕を当てながら、その眉間は寄っている。

 何かに苦悶したようなその様は、とてもじゃないが安眠からは程遠いように見えた。

 そっと、その眉間に手を伸ばした。


 そういえば、こんなに無防備な地主様は初めて見る。

 ゆっくりと寝台に腰下ろす。

 それから慎重に、まぶたに唇を押し当てる。

 願いを込めて。


 そっと触れた唇から、地主様の熱が伝わってくる。

 ふと、彼と目が合った。

「……これは夢か?」


 眠そうな声が驚きをふくんでいる。

 何だかくすぐったい。イタズラが成功したような気持ちになった。

 ふふ、と思わず笑い声をもらす。

 それを答えと受け取られたのだろうか。

 力強い腕に引き寄せられていた。


「だったら俺の好きにしていいのだな」


「はい……。レオナル様のお好きなように、お役立て下さい」


 胸元に唇を埋められ。

 与えられた熱に怯えながらも受け止めた。


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