大地主と大魔女の娘
神殿に仕える者たち
『さあ、エイメ。怖がらなくたって大丈夫よ。ゆっくり、くつろいでちょうだい』
優しい声音に凛とした響き。
深く年月が刻まれているけれども、張りのある肌。
薄い緑の瞳の宿す光は柔らかくって、でも鋭さもあった。
真っ白い髪の毛はひとつにまとめてある。
まとう衣装も真っ白だった。
私がおばあちゃんだと思って抱きついた人は、巫女王様なのだという。
おばあちゃんで無かったけど、本当にそっくりだと思った。
だって、まとう気配までもが酷似しているのだ。
それは森の中にある木々に包み込まれるかのような、あの静けさをたたえたあの空気だ。
言葉ではとても言い表せない。
あの森の静けさを醸し出せる人が、おばあちゃん以外にいたという事も驚きだ。
私が間違うくらいなのだから、ほとんど一緒だと思う。
そう私が告げると、巫女王様とおじいさんは顔を見合わせた。
「似ておるの。……の、娘の頃に」
「当然でしょうねえ。でも、改めて目にすると何やら感慨深いものね」
おばあちゃんの娘の頃に似ている? 私が?
二人ともおばあちゃんを知っているのだ!
驚きと期待を込めて、二人を見つめた。
「おばあちゃんを知っているのですか?」
「知っているも何も……。」
何故か言い淀む、その横顔をじっと見つめていると、頭を撫でられた。
「まあ、その話しはおいおいとな。ところでなあ、どうじゃった? あやつらの中で骨のありそうな輩はおったかの?」
「骨?」
何を訊かれているのか解らずに、ただその言葉を真似て繰り返した。
「それよりも何、あの態度の悪さ。あれでも団員の中でも出世頭というから驚くよ。確かに能力値は高いかもしれないけど、あれじゃあねえ? とてもじゃないけど乙女に付き従う騎士には相応しくないよ」
そんな私の様子にため息をつきながら、スレン様がぼやく。
「悪かった、悪かった。このじじいの躾がなっとらんかったから。まあ、許してやってくれまいか。あいつらはまだまだ若い」
おじいさんは神官長さまと呼ばれていた。
きっと、この方も偉い方なのだと思う。
でも、威張った所が無いから、とっても親しみやすい。
「スレン様?」
「さあ、フルル。お着替えしようねえ」
いつかのようにいたずらっぽく笑いかけられて、少しだけ安心した。
パンパン! と大げさに両手を打ち鳴らすと、給仕をしてくれていた女の子が二人、前へと歩み出た。
巫女王様が手招きすると、嬉しそうに頷きながら笑う。
「エイメ。この子達は私が信頼して色々と任せている、二人です。この子達からも大切なことを学んでちょうだいね。頼みますよ、二人とも」
「お任せ下さいませ、巫女王様」
二人ともそれは優雅に礼をとって見せた。