大地主と大魔女の娘
額に当てられたリボンは長く、うまい具合に後ろ髪と一緒に編み込まれた。
ひとつにキッチリまとめ上げるには、私の髪の長さでは足りなかったのだ。
用意された巫女装束は、そのままでは身体にまるで合わなかった。
大きい綺麗な布、といった印象のそれを、やわらかな黄み色のおり混ざった白い布で押さえてもらった。
綺麗に着付けてもらったのだという事くらい、初めての私でも理解できる。
とてもじゃないが一人では着られなかった。
白だけれども単調ではなく、胸元には細かなレース編みが施されている。
それを着方によっては、背の方に持ってくる事が出来るらしい。
よく見るとキーラ自身の衣装はそうしていた。
それがスラリとした立ち姿を更に引き立てている。
私はただただ感心して、その手つきを眺め、されるがままになっていた。
キーラもフィオナも「ああでもない・こうでもない」と、言い合いながら一生懸命準備してくれた。
「そら出来た! うん、なかなかいい出来栄えだわ」
「狙い通りかもね。エイメの清純さと神秘的な感じを全面に押し出せたかも。満足!」
健闘を称え合う二人をしり目に、緊張しきって顔色の悪い私が、鏡の中からこちらを見返していた。
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では夕刻にという宣言通り、巫女王様とスレン様がいらっしゃった。
「まあ、綺麗にしてもらったわね。キーラ、フィオナ、ご苦労様でした」
二人とも静かに頭を下げるだけで、後は大人しく控えている。
先程の元気の良さが嘘みたいだった。
その分を私にも分けて欲しい。
「さあ、エイメ。これからあなたを皆に紹介しますからね。どうかした?」
顔色を失った私に、巫女王様の優しい声が慰めてくれる。
『怖いの。さっきも怖かった。あんなに怖い男の人が大勢いる前に立つ何て……。』
この方はおばあちゃんじゃない。
でも、私にはおばあちゃんと同じに見えるから、口調も内容もつい甘えたものになっていた。
思わず口をついて出た古語に合わせて、流暢な古語で返してくれる。
『あら。きっと皆も怖かったのよ。あなたに嫌われたかもしれないって』
『また、私……。みっともないって言われるかと思うと、怖くてたまらない』
『また? そんな事ないわ。大丈夫よ』