大地主と大魔女の娘

「……。」

 確かに彼女を表すには適切な気がしたが、娘の扱いとしては不適切だ。


 彼女の身体が頼りなげに揺れるのは、彼女のせいでも望みでもないはずだ。


 足を引き摺りながら歩くたび揺れる、空気を孕んだ黒髪が浮かぶ。


 その娘の瞳はいつだって潤んでいた。

「珍しい事もあるものだと思って」

「何?」

「地主様が大魔女の娘を引き取ったって聞いて、興味を覚えない人間なんているのかな?」

「くだらん」

「ふふ。彼女の事、大魔女に託されたの?」

「まさか!」

「そう。ならやっぱり気に入ったんだ」

「何でそうなる!」

「ムキにならなくてもいいと思うけどー。じゃあ何で側においておくのさ? フルルは森で生活してたんでしょ? そのままにしておけばいいじゃないか。魔女の娘には森が必用でしょ」


「オマエに関係ないだろう」

「あるだろ。おおありだね。だってさ、お嫁さんにするために攫ってきたって噂が立ってるよ」

「……は!?」

 何でそうなるのか理解できない。


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