大地主と大魔女の娘
いよいよ底の絵柄が見えたカップを受け皿に戻した。
飲み干したカップにはぬくもりの名残さえない。
さり気なくお代わりを寄こそうとするフィオナに目配せを送り、遮った。
「あの……。先程、神官長様からお聞きいたしました。お二人ともに、余計な気を遣わせてしまったようで申し訳なく思っております」
胸に手を当てて謝罪の言葉を口にする。頭を下げた途端に、レオナル様が勢い良く立ち上がった。
ガタン! という椅子が立てた音が大きくて、思わず面を上げてしまう。
直立不動という言葉が相応しい。思わず腰が引けた。
そのまま、たじろいでいると、慌てたように膝を折られる。
「エイメ様が気にされる事など何もありません。このレオナルの物言いが悪かったのです。まさか貴方がそこまで深刻に受け止めるとは思いもよりませんでした。貴方が一人で出歩くと危険だから等とは言いすぎでした。ただ単に、その際には俺達を頼って下さるようにと強調したかっただけです。どうか……お許しいただけますか?」
「私は言葉を、言葉のままに受取ります。そこに暗に何かを込められているのだと、そう諭されても理解に苦しみます。それとも言葉の裏の裏を読み取るのが、皆さまのしきたりなの? だとしたら、私には一生皆さまに理解されませんし、出来ません。付いていくことが出来にくいのです」
そう。私は言葉は、発された響きをそのままに受け止める。
古語でないなら特に、その傾向が強かった。
伝えたいことは言わねばならない。
それは私にも言える事だったから、緊張しながらも言葉を選んだ。
「それに。私が読み取れるのは、読み取ろうと思えるのは――言葉を持たないコ達だけですわ?」
二人とも黙って私の話しを聞いていた。