大地主と大魔女の娘


 『エイメ。デュリナーダは乙女の、エイメの騎士に相応しく成った!』


 黒い瞳を輝かせて、彼は誇らしげに言った。その表情は人懐っこく、無邪気そのものだ。

 眉はきりりと凛々しく、目元は涼やかだ。

 青年へと差し掛かった中にも、幼さが残る。そんな顔立ちだった。

 彼の白い髪の色だけが、かろうじてデュリナーダという名残を感じさせる。

 成った、と言った。何にと問いかけそうになったが、目の前に答えがそのままある。

 驚くしかない。ただ、ただ、目を見開くばかりだ。皆もそのようだった。


「獣、殿なのか?」

『そうだ。我こそがエイメ相応しい騎士。だからお前たちは必要ない。出て行け』


 レオナル様の問いかけを鼻で笑う。

 デュリナーダが言い張るように、見た目はまるっきり護衛団の一員だった。真っ黒い制服までちゃんと着込んでいる。腰には剣を帯びている。


『エイメ? どうして我を抱きしめてくれないのだ?』


 ただ広げられたままで、一向に絡められる事のない腕を見ながら、デュリナーダがぼやいた。


『えっと、えっとね? デュ、デュリナーダ?』

『ああ、そうか。今、我にも腕がある。我が抱きしめればいい話だな』

『ええっ』


 デュリナーダの腕が大きく広げられた。思わず身を引いてしまう。


『エイメ?』


 私の態度がまるで理解できない、と言うような彼の眼差しがあった。


『あの、あのね。ダメだよ、デュリナーダ』

『何故だ? 我はいい子だぞ? 相応しい騎士だ』

「そこまでだ、獣殿。……デュリナーダ」


 レオナル様が、私と彼との間に身を滑り込ませる。


『何故だ! お前たちなんぞ、早く出て行け! なあ、エイメ?』


 そんなデュリナーダの肩にぽん、と手が置かれた。神官長様だ。

 反対側にも、もう一つ。そちらはシオン様だった。


「獣殿は確かに相応しい騎士に成られたようですな」

「だったら我々と同じ立場だな、デュリナーダ?」

『何?』

「そうですよ、獣殿。乙女に相応しい騎士と成られたと仰る。それならば態度も我々と同じようにならわねばなりませんよ」


 神官長様は厳かに言い渡した。



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