大地主と大魔女の娘
『……。』
『そ、そうよ、デュリナーダ。貴方も相応しい振る舞いをしてちょうだいね。
皆様の仰ること、良くきいてね。お利口さんだもの。わかるわよね?』
目配せを送られ、慌てて私も口を合わせた。
デュリナーダは納得いかないようだが、ひとまず大人しくしていてくれる。
『こやつらの言うことなんぞ、ききたくない』
『あのね、命令する事をきいてね、って事じゃないの。教えてもらってね、ってことよ』
『教えてもらう?』
『ええ、そうよ。立派な騎士になってくれるのでしょう』
『エイメがそう言うのならば仕方がない。少しだけ、教わってやっても良い』
ほっと胸をなで下ろして、神官長様に頭を下げた。
「デュリナーダをお願いします」
「仰せのままに、エイメ様。ささ、デュリナーダ。まずは巫女王様にご挨拶じゃ」
『それがしきたりか? 仕方がないな。エイメ、すぐにもどるからな』
デュリナーダは面倒くさそうに、神官長様の後に続いた。
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「エイメ様。我々はひとまず退出致します。お騒がせして申し訳ありませんでした」
そう一息に告げられる。その言葉で我に返った。どうにか頷こうとした途端、右手を目線と同じにまで持ち上げられた。何事かとそのまま見守る。
レオナル様の視線とかち合った。深く濃い青の瞳と。
その瞳が一瞬伏せられたと思ったら、指先にぬくもりと柔らかさ、そして微かに肌を掠める何かを同時に感じていた。
口付けられているのだ、となかなか思い当たらなかった。
あまりの眼差しの強さに気圧されて、そちらに意識を取られていたせいだ。
『貴様! 我のエイメに何をする!!』
デュリナーダが何事かを叫んでいるのを、どこか遠くに聞いていた。