大地主と大魔女の娘


 『……。』

『そ、そうよ、デュリナーダ。貴方も相応しい振る舞いをしてちょうだいね。
 皆様の仰ること、良くきいてね。お利口さんだもの。わかるわよね?』


 目配せを送られ、慌てて私も口を合わせた。

 デュリナーダは納得いかないようだが、ひとまず大人しくしていてくれる。

『こやつらの言うことなんぞ、ききたくない』

『あのね、命令する事をきいてね、って事じゃないの。教えてもらってね、ってことよ』

『教えてもらう?』

『ええ、そうよ。立派な騎士になってくれるのでしょう』

『エイメがそう言うのならば仕方がない。少しだけ、教わってやっても良い』

 ほっと胸をなで下ろして、神官長様に頭を下げた。


「デュリナーダをお願いします」

「仰せのままに、エイメ様。ささ、デュリナーダ。まずは巫女王様にご挨拶じゃ」

『それがしきたりか? 仕方がないな。エイメ、すぐにもどるからな』


 デュリナーダは面倒くさそうに、神官長様の後に続いた。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。:・。・:*:・。・


「エイメ様。我々はひとまず退出致します。お騒がせして申し訳ありませんでした」


 そう一息に告げられる。その言葉で我に返った。どうにか頷こうとした途端、右手を目線と同じにまで持ち上げられた。何事かとそのまま見守る。

 レオナル様の視線とかち合った。深く濃い青の瞳と。

 その瞳が一瞬伏せられたと思ったら、指先にぬくもりと柔らかさ、そして微かに肌を掠める何かを同時に感じていた。


 口付けられているのだ、となかなか思い当たらなかった。

 あまりの眼差しの強さに気圧されて、そちらに意識を取られていたせいだ。

『貴様! 我のエイメに何をする!!』


 デュリナーダが何事かを叫んでいるのを、どこか遠くに聞いていた。




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