大地主と大魔女の娘
ただ注目して欲しかったのだろう。キルディは眠そうに目をこすりながら、私に寄りかかってくる。
ヒックヒックと苦しそうに泣きじゃくっていたミリアンヌも、腕の中で寝息を立て始めていた。
こうやって感情を爆発させてから眠りにつくと、明日には驚くほど元気になっているという事も学んだ。
だから心配はしていない。むしろ溜まったままの感情を抱えたまま、押し殺すようにする子の方が心配だった。
キルディの柔らかな亜麻色の髪に指を絡ませると、やっと安心してくれたらしく笑顔がこぼれた。
小さい子達の顔をぐるりと思い出す。もう会うこともないであろうカールと、おしゃまな双子達の事も思う。
特に心配と思い当たる子はいなかった。
「巫女ひめさま……。」
「うん。もう寝ましょうか」
こっくりと頷くのを見届けてから、蝋燭の炎を吹き消した。
辺りは暗闇に包まれる。
小さい子達のさみしい、さみしいという気持ちに寄り添いながら、横になる。
ミリアンヌを片腕で抱きかかえるようにし、キルディとは手をつないだ。
すぐに辺りは静寂に満ちる。聞こえるのは規則正しい寝息だけになる。ここは天の国だとすら思う。
ふいにキルディがぎゅ、と手を握ってきた。
「巫女ひめさま……も。さみしいの、ガマンしちゃ、ダ…メ……だよ」
やっぱりここは天国だ。こんなにも天使が側にいてくれる。
子供たちと過ごすことで、私は何とか日々を持ちこたえている。
あれから騒がしい事は何一つ、起こっていない。
どうかこのまま何事も無く過ごせますように。そう祈るような気持ちで日々を送る。穏やかだった。……表面上は。