大地主と大魔女の娘
もうじき、巫女王候補の一等騎士を決めるための大会が催される。
その旨の発表があったのが三日前。
今、騎士団及び術者の間では見えない火花が散っている。
趣旨は剣術大会だが、能力者はその力も使っていいことになっている。
実力がものをいうのだ。
あらゆる方面から巫女王を補助し、護衛を勤められるならば、能力が高い方がいいに決まっている。
だがあいにくと俺には剣しかない。だったらそこを磨くしかない。
名乗りを上げた者の中には、何も巫女王候補付きを狙ってというだけですまない者もいるのも確かだ。
ここで現巫女王様に覚えもめでたく取り立ててもらいたい。そう願う者もまた多い。
のし上がりたい者にはまたとない機会だ。かつての俺のように。
「俺はあの娘をいずれは……にする。だがまずは手始めに一等騎士の座をいただく。稽古に付き合え」
「ええええ!? つ、っ……って! 団長、本気か?」
企みを声をひそめて宣言すると、レメアーノが声を上げた。
自身も言葉をひそめると辺りを見渡した。
「無論」
当たり前だ。誰が誉れある騎士の役得を黙って放棄するか。
それに何より、他のヤツに渡してなるものか。
誰があの娘の口づけをみすみす他の男にくれてやらねばならないのだ?
それだけではない。
細い指先を、手のひらを触れさせてやらねばならないのだ?
眼差しが注がれるのすら許し難い。関心だってそうだ。寄せられる信頼も。あの娘の心を占めるのは俺だけであればいい。俺だけに、俺のためだけに微笑んでくれればそれでいい。
それが「誰か」に向けられる?
全力で阻止するに決まっている。