大地主と大魔女の娘
……ぅわぁぁ―――ん!
部屋まで送ってもらうと、子供たちの泣き声が聞こえてきた。
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慌てて扉を開けると、主にミリアンヌが大変な事になっていた。
「みこ、ひめしゃま――――ぅああああああああんん!! みこひめさま、どこ――!!」
大声で泣き叫び、同じく世話係のキーラに抱っこされながらも、身体を大きくのけぞらせている。
「ここだよ、ここにいるよ! ミリアンヌ!」
レオナル様の腕をすり抜けるようにして、部屋へと戻った事を知らせた。
「あ! 巫女ひめさまとキルディが戻ってきたっ」
「本当だ。ほら、ミリアンヌ、巫女ひめさま、いたよ」
「巫女ひめさま、巫女ひめさま、廊下暗かったでしょ? 大丈夫?」
「ああ、ありがとう。サミラ、ターニャ、ネア。暗かったけどランプがあるから大丈夫だったよ」
女の子たちが口々にミリアンヌを慰めながら気を引き、私へと群がってきた。屈んで順番に抱きしめる。
急に私が戻った事に驚いたのと同時に、安心したのだろう。ミリアンヌがピタリと泣き止んだ。
こちらに向かって小さな両手を精一杯差し出してくる。
「ああ、もう~。エイメ様じゃないと嫌だって」
キーラが苦笑しながらミリアンヌを下ろした。
私の足では抱きかかえて上げる事はかなわないので、腰下ろす。
そうして、勢い良く体当たりしてきた体を受け止めた。
「どこ行ってたの――! みりあのことおいて、どこ、行ってたの――!!」
「うん、ごめんね。騎士さまの所だよ。ミリアンヌが怖いって言ってた音がしなくなるようにお願いに行ってたの」
「みりあのこと、おいて行った! キルディは一緒に行ったのに」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を真っ赤にして、ミリアンヌは訴えてくる。
顔を拭いてやりながら、幼い訴えに耳を傾ける。なるほど。彼女のお気に召さない点はそこなのか。
「キルディばっかりずるい――!!」
「なによ。ミリアンヌは暗いの怖いから行けないって言ったくせに!」
珍しくキルディが言い返した。理不尽な言いがかりに腹が立ったのだろう。
レメアーノ様の手を放すと、私に駆け寄ってきて負けじと抱きつく。
「そうだよ。ミリアンヌ、いい子でお留守番していられるって言ったじゃない?」
「そうだよ~。いい子で待っているって言ったよ」
「ね~?」
「みりあ、いい子だも」
「そうだよ。キルディにちゃんとありがとうしないとねー」
「ね~?」
そんなキルディに皆も気を使ったようだ。そして。なおかつ、ミリアンヌのご機嫌取りも忘れない。
女の子というのはむつかしくも、すごい生き物だと感心する。