大地主と大魔女の娘
「ほら、みんな。おやすみなさいのご挨拶をしてちょうだい」
何やらいたたまれない空気の中、キーラが子供たちを促した。
「はぁい。おやすみなさいませ、騎士様」
「騎士様、おやすみなさい!」
「なさい~!」
「レメアーノ様、ありがとうございました。おやすみなさいませ」
「うん、おやすみキルディ」
「おやすみなさいませ、団長さま」
「ああ、おやすみ」
キルディが律儀に二人に挨拶するのを、ミリアンヌが眠そうながらも、興味深そうに眺めている。
「ほら、ミリアンヌも?」
そう促すと眠い目をこすりながら、小さな手を振った。
「おやすみなさい、おじちゃんたち」
その言葉にレメアーノ様が「団長だけでなく俺もかよ」と大きく肩を落としていた。
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「騎士様たち、ステキだったね!」
ひそひそ話しながら眠りに誘われていった。
くすくす、うふふとそりゃあもう、女の子たちは大はしゃぎだ。
小さくとも女の子だなあ、とあのお祭りの準備の日々を思い出したりしてしまう。
いつしかそんなざわめきも収まって、静けさが満ちる。
そんな夜闇の中、いつまでも神経が高ぶって寝付けなかった。
そっと自分の右手の甲に触れる。――あの方がしたみたいに唇で。
ぬくもりを追いかけるように目蓋を閉じた。
耳の奥ではさっき間近で聞いた、金属音が鳴り響いている。