大地主と大魔女の娘
大会に臨むもの達
もうしないはずの剣のぶつかり合う音。
それと自分の鼓動を重ねた。
きぃンという音に心乱される。きっと子供たちとは違った意味で。
切なくて、愛しいと叫ぶ声にも似た響き。
言葉ではなくとも伝わってくる想いは、純粋なだけではない。
――あなたが欲しい。
そう声無き声に切り刻まれているかの心地を味わった。身に刻まれるようだ。
彼は言った。
「必ず勝ちます」
強い光を宿した瞳に、しっかりと見据えられて言葉が出てこなかった。
私の中に眠らせたはずのカルヴィナが、恐れおののいていた。
あの時の――。
お祭りの日のシュディマライ・ヤ・エルマを思い起こさせた。
身震いし、両腕で自分自身を抱きしめる。
自分に湧き上がってくる想いを封じ込めて、あふれ出てしまいませんようにと願う。
私の瞼の裏に居座る瞳を抱えて、闇にくるまれて眠りに誘われて行った。
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。:・。・:*:・。・
ピィチチチチ――――!
微かに遠く。それでもしっかりとさえずる小鳥の鳴き声を聞いた。
「……ん」
まぶたの裏にわずかな光を感じた。そろりとまぶたを持ち上げる。
だがまだ辺りは薄暗かった。ずいぶんと早く目が覚めてしまったようだ。
傍らにあったはずの小さなぬくもりは、どういったワケか頭が逆さまになっていた。
上掛けも大きくはだけている。肌寒いのだろう、ミリアンヌが身を縮こめて丸まっていた。
そっと上掛けでくるんでやる。あどけない寝顔の眉間に寄っていたシワがゆるむ。
起してしまわぬように注意しながら、部屋を後にした。
顔を備え付けの水場で洗い、申し訳程度に髪を撫で付けた。
キーラとフィオナの言い付けを守って、ちゃんと薬草水をつけるもの忘れない。
それから――。迷ったが着替えずにショールだけを羽織った。
杖を手に取る。
シュリトゥーゼル達の呼び声に誘われるままに庭に出て、そぞろ歩く。
しんと静まり返った空気は、吸い込むと心地よく気分がすっとした。
徐々に陽の光が増して行っているのを感じながら、ぼんやりと進んだ。
辺りには薄い靄が立ち込めている。
その中に差し込む光の束が美しい。
それを受けて光る雫が、草木をより一層輝かせて見えた。