大地主と大魔女の娘
こんな事をあと何回、繰り返さねばならないのだろう?
既に四試合ほど見届け、私はぐったりしてきていた。ただ座っているだけなのに、胸が苦しい。
激しく動き回ったあとみたいだった。
今ほどの試合は呆気なく勝負がついてくれて、正直助かった。
胸をなで下ろす。
「今の騎士もやるわねえ。名前は?」
「あれはウェルナー。サーベント家の三男だ」
「へえ、どうりで。太刀筋が呪術めいていたね。さり気なく術を用いてめくらましとしたか。楽勝だったね」
巫女王様と神官長様、スレン様がそれぞれ評するのを聞きながら、どうにか呼吸を整えていた。
「疲れた?」
「はい。少し」
「君、何か飲み物を! まあ、もう少ししたら、いったん休憩だから頑張って?」
「はい……。」
フィオナの差し出してくれた杯を受取りながら、曖昧に頷いた。
ゆっくりと口をつけて、そのまま一気に飲み干してしまった。
喉がカラカラだったとようやく気がつく。
「次は騎士団長殿と、ウェルナーの対決だ」
胸が痛いくらい跳ねた。
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「始め!!」
神官長様の開始の合図と共に、レオナル様が飛び込んだ。
――キィィ……ィン!
響き渡ったのは覚えのある金属音。それと微かな余韻。
会場は静けさに包まれている。
何が起こったのかを、皆が理解できるまでの間、ただ風が吹き抜けていった。
中央では膝を付いた剣士に、剣の切っ先を突きつけるレオナル様の姿がある。
剣士は手首を押さえていた。そして、ずい分と離れた場所に、彼の剣と思しきものが落ちていた。
「し、勝負あった! 勝者! ザカリア・レオナル・ロウニア!!」
その宣言を聞き届けると、レオナル様はやっと剣をしまった。
敗者に背を向けると、こちらに向かって歩き出す。
歓声というよりも、どよめきが起こっている。彼のあまりの強さに動揺しての事だろう。
私だって言葉もない。
「さすがはレオナル。騎士団長の肩書きは伊達じゃないみたいだね」
スレン様がポツリと呟いた。