大地主と大魔女の娘

乙女の祝福を受ける者



 キィン――!

 ぶつかり合う剣の音は空気をも切り裂く。

 とてもじゃないけれど、見ていられない。

 そう思い幾度も顔をそむけかけた。耳も塞ぎたかった。

 その度に神官長様の言葉を思い出す。


 目をそらさんでいただきたい。騎士どもが戦いに臨むのはあなた様の為なのですから。


 その言葉には、懇願と叱責の両方が含まれているように感じた。

 そうだ。私はここに巫女王候補として、立っている。

 私自身が未だにまごついて、認められないでいるとしても。


 皆の目には巫女王候補として写っているはずだ。


 皆……。

 もちろん、あの方の目にも。

 唇をかみしめ、面を上げる。

 舞い上がる砂埃の向こうに見える、彼らに視線を注ぐ。真っ直ぐに、そらさずに。

 私に出来る事といったら、それだけだと言うのなら、そうしよう。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。:・。・:*:・。


 シオン様の呼び声に現れたのは、デュリナーダだった。

 どうしたのだろう?

 ものすごく嫌な予感がして、思わず立ち上がってしまった。


 まさか、まさか、シオン様とデュリナーダとでレオナル様を?


「手を組みました」


 風にのって運ばれてきたシオン様の答えに、今度は足から力が抜ける。

 ガタン! と大きく音を立てて、再び椅子へと座り込んでしまった。


「あれあれぇ? 何が何でも勝ちたい奴らはやる事が違うねー。手段を選ばない」


 椅子の背もたれ越しに、両肩に手を置かれた。スレン様だ。

 語尾が楽しそうに弾んで聞こえた。最低だ、と思ったが何も言い返すことが出来なかった。

 ただ、バクバクと煩い自分の胸の音を聞きながら、呼吸を整えるだけだった。


「そのようだの。是が非でも勝ちたいという強い気持ちが、本物であればこそだろう」

「まあ。何であれ、お手並み拝見と行きましょうか。ねえ?」


 私は何も答えることが出来なかった。


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