大地主と大魔女の娘
乙女の祝福を受ける者
キィン――!
ぶつかり合う剣の音は空気をも切り裂く。
とてもじゃないけれど、見ていられない。
そう思い幾度も顔をそむけかけた。耳も塞ぎたかった。
その度に神官長様の言葉を思い出す。
目をそらさんでいただきたい。騎士どもが戦いに臨むのはあなた様の為なのですから。
その言葉には、懇願と叱責の両方が含まれているように感じた。
そうだ。私はここに巫女王候補として、立っている。
私自身が未だにまごついて、認められないでいるとしても。
皆の目には巫女王候補として写っているはずだ。
皆……。
もちろん、あの方の目にも。
唇をかみしめ、面を上げる。
舞い上がる砂埃の向こうに見える、彼らに視線を注ぐ。真っ直ぐに、そらさずに。
私に出来る事といったら、それだけだと言うのなら、そうしよう。
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シオン様の呼び声に現れたのは、デュリナーダだった。
どうしたのだろう?
ものすごく嫌な予感がして、思わず立ち上がってしまった。
まさか、まさか、シオン様とデュリナーダとでレオナル様を?
「手を組みました」
風にのって運ばれてきたシオン様の答えに、今度は足から力が抜ける。
ガタン! と大きく音を立てて、再び椅子へと座り込んでしまった。
「あれあれぇ? 何が何でも勝ちたい奴らはやる事が違うねー。手段を選ばない」
椅子の背もたれ越しに、両肩に手を置かれた。スレン様だ。
語尾が楽しそうに弾んで聞こえた。最低だ、と思ったが何も言い返すことが出来なかった。
ただ、バクバクと煩い自分の胸の音を聞きながら、呼吸を整えるだけだった。
「そのようだの。是が非でも勝ちたいという強い気持ちが、本物であればこそだろう」
「まあ。何であれ、お手並み拝見と行きましょうか。ねえ?」
私は何も答えることが出来なかった。